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ロリポップ!
今回は私の大好きな「カヴァレリア・ルスティカーナ」のお話です。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、ヴェリズモ・オペラですが、中でも最も有名なのが「間奏曲」かもしれせん。
オペラに興味が無い人でも、「カヴァレリア・ルスティカーナ」を知らない人でも、この曲は聴いた事があるという人は多いのではないでしょうか。
「カヴァレリア・ルスティカーナ 間奏曲」に魅了される
私がこの曲に出会ったのが中学生の頃。
当時エレクトーンライブで演奏されていたこの曲に魅了され、すっかり虜になってしまいました。
とは言え、当時はyoutubeも無い時代、曖昧な記憶でそれっぽい曲名と一部のメロディラインしか記憶に残っておらず、「この曲弾きたいんだけど、何の曲?」と調べようがなく大人になりました。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」なんて舌を噛みそうな難しい名前、一度聞いたくらいじゃ覚えられないので、大人になってから初めてオペラ曲だと知りました。感動でした。
それから、オペラには全く興味がなく間奏曲だけを聞いていたのですが、最近になってオペラの内容が気になり調べてみました。
そこで分かったオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」のストーリーにこれまたビックリ。
音大などに行っている人には知っていて当然なのかもしれませんが、私は調べてみて初めて知ったのでその内容に衝撃を受けました。
間奏曲はのびやかで穏やかで物静かな美しい曲ですが、ストーリーはまるで昼ドラの様な愛憎悪劇ドロドロで、間奏曲の美しさとのギャップに若干引きました。
「え?何で?どういう事?」これが私の一番の感想でした。
楽器を演奏する人ならやっていると思いますが、演奏する時にその曲のイメージというかストーリーを思い浮かべながら演奏をするのが基本ですが、昼ドラドロドロ劇と間奏曲が合わなすぎて感情迷子状態です。
間奏曲は、誰のどんな心境を歌ったものなの?
どういう情景を思い描いたら良いの?
果たしてこの疑問は解決するのでしょうか。
さて、私の感想はこの辺にして、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のストーリーについて見ていきましょう。
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時代背景と宗教、ファッション
「カヴァレリア・ルスティカーナ」のストーリーを一言で言うと、
「不倫による男達の名誉の戦いと女達の思い」
でしょうか。
1890年代のイタリア(シチリア)が舞台ですが、このストーリーを理解するためには、当時の時代背景と風習、宗教が大きく関わってきます。
舞台となったその日が復活祭当日だったという事なので、まずは復活祭について、そして時代背景と当時のファッションについて調べてみることにします。
- 「復活祭」とは?
- 時代背景
- 当時のファッション
復活祭とは?
イエス・キリストの復活をお祝いするお祭り。
イエス・キリストが十字架にかけられ処刑された事はよく知られていますが、イエス・キリストは「3日後に復活する」という予言を残して、3日後の日曜日に予言通りに復活したと言われています。
その奇跡を祝う祭りとして生まれたのが、復活祭(イースター)です。
キリスト教を信仰する人々にとっては大切なお祭りであり、イエス・キリスト生誕した日を祝うクリスマスよりも重要な意味を持つイベントで、その日にだけ出す特別な料理があったりします。
宗派や地域によっては一定期間肉や卵、乳製品が禁止となりますが、復活祭当日は解禁されるので豪華な食事がテーブルに並べられます。
教会のミサに参加して、豪華な食事と華やかな飾りつけ、これだけで村全体が興奮状態だったのが想像できます。
現代の日本では、意味は分からずとも「イースター」「卵の装飾」と言えば、なんとなく想像できる人も多いのではないでしょうか。
街中のディスプレイも、華やかで、且つ繊細なデザインの卵が目に入りますよね。
「イースターエッグ」と言って、キリスト教では卵は「復活」や「生命」を意味します。
また、うさぎもイースターのシンボルなのだそうです。
「イースターバニー」は子孫繁栄の象徴だそうですよ。
日本にいるとかわいいデザインや飾りつけに目が行きがちですが、こんな意味があったのですね。
祭日は、春分後最初の満月の後の日曜日で、クリスマスの様に固定された日付ではなく毎年日付が変わります。
現代では復活祭を挟んで連休を取り、仕事や学校を休みにする所も多く、皆でお祝いムードになるのがよく分かります。
きっとカヴァレリア・ルスティカーナの舞台当日の復活祭も、現代の様に村全体がお祭りムード一色だったに違いありません。
さて、こんなお祭りムードの中これからどんな事が起きるのでしょうか?
1890年代 シチリア
かつて「イタリア」は国家ではなく、イタリア半島とシチリア島、サルデーニャ島などを含む地域の事でした。
イタリアは数百年の間支配者が次々と変わり、イタリアの中でも地域によって、支配者が違っていたので徐々に統一を試みていきました。
そして1871年にようやくイタリア統一はほぼ完成する事になりました。
北イタリアの工業化が進む一方、南イタリア特にシチリアでは経済状況が1880年後半から悪化し、長期にわたる不況で貧困者が続出していました。
それは、地主の土地支配が残っており、生産性も低くかった事が要因でした。
20世紀末にはそのような状況の中から
農民や労働者たちが集まって、生活環境の改善や労働条件の改善のため、「ファッシ」と呼ばれる組織が結成され、中央政府に反抗しました。
しかし、この運動は1894年に政府によって弾圧される事になるのです。
カヴァレリア・ルスティカーナはヴェリズモ·オペラと呼ばれる、写実主義(リアリズム)なので、劇中の背景もこれに近い状況のかもしれません。
カヴァレリア・ルスティカーナの劇中では、登場人物のトゥリッドゥは兵役に出ており、その母ルチアは居酒屋を経営、アルフィオは馬車屋という事になっています。
馬車屋はいわゆる運送業であり、色々な所を巡る事ができる憧れの職業だった反面、家を留守にしがちでした。
それをいいことに妻のローラはトゥリッドゥと不倫をしてしまい、物語が展開していくのです。
劇中に出てくる村はキリスト教地域で、トゥリッドゥやアルフィオもそうでキリスト教の教えは絶対、それに背いた場合は、例え家族であろうと容赦はししないという程敬虔なカトリックでした。
宗教もカヴァレリア・ルスティカーナを理解する為には重要なキーワードになってくるので、そこにも注目したいですね。
定番の服装
カヴァレリア・ルスティカーナの舞台である1890年代のシチリアは、地主による土地支配で貧困状態でしたが、この頃の庶民たちはどんな服装をしていたのでしょうか。
女性:ブラウス、ジャケット、頭に被るショール、スカート、エプロン
男性:ブラウス、ジャケット、ズボン、ベスト、帽子
女性はどの時代もおしゃれを意識するものですが、1890年代のシチリアの女性達も都会の流行りを取り入れて、ファッションを楽しんでいたようです。
しかし、地主の土地支配が根強く残るこの地域は貧困状況が続いていた為、流行りのデザインに似せて手作りで衣装を作っていたようです。
流行りの服装
流行りの服装
- コルセットで腰を締め付け、体型を細く見せる
- 肩が少し膨らんだ袖
シチリアの女性たちは、満足に生地を買う事が出来ない中、できるだけ流行りに近づけられるようにデザインし、手作りしながらおしゃれを楽しんでいました。
シチリア女性たちのスタイル
- 手編みのレースの大きな襟やストールを、他の服に付け替えてローテーションしていた。
- 白いブラウス
- ブラウスの真ん中にはヒダを寄せ、できるだけ体型が細く見えるようにデザイン。
- コルセットをきつく締めあげるのが流行だったが、それをすると農作業ができなくなってしまうので、あまり強く締める事ができなかった。そのため、ブラウスの真ん中にヒダを寄せるデザインでカバー。
- 肩側に膨らんだ袖
- 大きなエプロン
- ブラウスと同様に真ん中ギャザーを寄せて、よりスマートに見えるようにした。
- ヘアスタイルはTOPで結いまとめる
庶民は皆が同じスタイルをしている時期が長かったのですが、それは流行りのテンプレート自体を手に入れる事が難しい状況だったという事もあるようです。
例えば、お母さんのエプロンと娘さんのワンピースの生地が同じとか、手編みの襟を他の服に使い回すとか、できるだけお金をかけずにおしゃれができるよう工夫をしていたようです。
こう聞くと、どこか日本にも通じる所があるようで、親近感が湧きます。
女性は頭に被るスカーフは必須
また、女性は頭に被るスカーフも必須。
外で髪の毛を見せるなんて「男性を誘ってる」と思われたそうです。
カトリックの道徳的観念なのだそうです。
女性は婚前は貞操を守るのは必須で、もしもこの禁忌を冒してしまったら、一生娼婦として生きていかなければならないという厳しい教えがあったので、カヴァレリア・ルスティカーナの劇中の恋人たちはこっそりとデートをしていたのかもしれません。
男性はジャケット、帽子が必須
男性は、上着(ジャケット)、帽子が必須で、「ジャケットなし、帽子なしは下品!」と思われる節もありました。
帽子はハンチング帽で、コッポラ帽子とも呼ばれ、イギリスの貴族たちが狩猟時に被っていたものが20世紀に伝わったとされています。
ウールやコーデュロイ素材が多く、安価でできるため、漁師や羊飼いなど、庶民たちのワークキャップとして愛されていたようです。
分かりやすいのが、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のアルフレードが被っている帽子がそれですね。
今もイタリア人=ハンチング帽のイメージは強いですよね。
日本人からするととてもおしゃれで格好良く見えます!
舞台設定を確認する
イタリアの小説家 : ジョヴァンニ·ヴェルガの小説が原作
イタリアの作曲家 : ピエトロ·マスカーニ のオペラ(ヴェリズモオペラ*写実主義)
題名は「田舎の騎士道」という意味(初演1890年)
舞台 : イタリア シチリア山間部
登場人物 :
サントゥッツァ(♀)・・・トゥリッドゥの恋人
トゥリッドゥ(♂)・・・サントゥッツァの恋人
ローラ(♀)・・・トゥリッドゥの元カノ、アルフィオの妻
アルフィオ(♂)・・・ローラの夫、馬車屋、留守がち
ルチア(♀)・・・トゥリッドゥの母、居酒屋のママ
時代背景 1890年代4月頃
復活祭当日 シチリア
あらすじ ~ 4人の男女の感情が交差するストーリー ~
「カヴァレリア・ルスティカーナ」におけるとある村の話
舞台は、シチリア島の山間部にあるとある村。人々は地主に土地を支配され、貧しい暮らしを送っていた。
待てない女 ローラ
ローラとトゥリッドゥは恋人同士。
二人の関係は順風満帆かと思いきや、ローラは恋人のトゥリッドゥが兵役に行っている間に、淋しいという理由で馬車屋のアルフィオと浮気。
さらに結婚までしてしまう。
しかし、夫となった馬車屋のアルフィオ(♂)は各地を移動する仕事だったため、家を留守にしがちだった。
ローラは一人アルフィオを待つ日が多かった。
ここでもまたローラはやらかしてしまう。
夫の留守をいいことにローラは、元彼のトゥリッドゥと縒りを戻してしまうのだった。
決断できない男 トゥリッドゥ
一方、トゥリッドゥは自分が兵役に行っている間に恋人のローラに浮気され、更に他の男と結婚までされてしまったローラとは別れ、サントゥッツァ(♀)と付き合い始める。
やがて、サントゥッツァ(♀)はトゥリッドゥ(♂)との子を妊娠。
しかし、妊婦のサントゥッツァ(♀)を捨て、ローラと復縁してしまう。
復活祭の日、トゥリッドゥ(♂)はサントゥッツァ(♀)ではなく、ローラと一緒に過ごす。
後にこの事がローラの夫であるアルフィオ(♂)にばれ、二人は決闘する事となる。
純粋な愛が報われなかった女 サントゥッツァ が起こした行動とは?
サントゥッツァ(♀)とトゥリッドゥ(♂)は恋人同士。
サントゥッツァ(♀)は妊娠中。
しかし、恋人のトゥリッドゥ(♂)は元カノのローラと浮気をして、サントゥッツァ(♀)は捨てられてしまう。
その事を知った彼女は、復讐心に駆られローラの夫であるアルフィオに二人の関係をチクるが、のちに起こる悲劇に後悔に苛まれる事となる。
一番の被害者 アルフィオ 正義は勝つのか?
アルフィオは馬車屋という人気の職業についており、各地を回り忙しく過ごしていた。
ローラと出会い結婚する事になるのだが、馬車屋という仕事柄、各地を点々としなければならず、ローラを一人残し、家を留守にしがちだった。
ローラを信じ仕事に精を出していたアルフィオだったが、留守の隙にローラに裏切られてしまう。
ローラは元彼と不倫していたのだ。
仕事から戻ったアルフィオは妻のローラと元カレであるトゥリッドゥ(♂)が浮気をしている事実を聞き、怒りに震える。
ある復活祭当日、ムードに包まれた雰囲気の中、アルフィオはトゥリッドゥ(♂)に決闘を申し込む。
「名誉」をかけた決闘
この村に根付いた風習
ここから、この村に根付いた風習が大切なキーポイントとなってくる。
この村では、婚前性交渉をする事は禁忌とされていた。
もし、これを破る事があったのなら、家族であろうと縁を切られてしまうのだった。
これは女性にとっては厳しいもので、女性がこの禁忌を破った場合、それが例え自分の意志ではない犯罪行為だったとしても、その後は一生娼婦として生きていかなければならなかった。
サントゥッツァ(♀)は、この禁忌を破って妊娠していたのだ。
対して男性は、相手を殺してしまってもそれは「名誉殺人」として軽犯罪として扱われた。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」テーマである「名誉」を傷つけられた事に対して、それを重んじる文化があった。
「名誉」をかけた決闘当日
今日は復活祭。
村はこの日の為に特別な料理を作ったり、教会のミサに参加したりと、お祝いムードに包まれていた。
ただ、サントゥッツァ(♀)は暗い表情をしていた。
サントゥッツァ(♀)は、恋人であるトゥリッドゥ(♂)が自分を払いのけ、浮気相手のローラを追いかけて行った事に心を痛めた。
怒りに震えたサントゥッツァ(♀)は、ローラの夫であるアルフィオ(♂)に二人の事を告げ口するが、それを聞いたアルフィオ(♂)は「この復活祭は呪われた復活祭にしてやる!」と憤慨。
復活祭のお祝いムードの村人たちに酒を振る舞い、どの面下げてと言うと口が悪いですが、アルフィオ(♂)にも酒を勧めようとしていた。
当然、アルフィオ(♂)はトゥリッドゥ(♂)が勧める酒なんか飲めるはずもなく、冷たく断る。
実は、ローラ(♀)とトゥリッドゥ(♂)の不倫は村中皆の周知の事実であったため、この状況に不倫がばれたのだとこの場が一気に凍り付く。
当のローラは安定のくずっぷりを発揮。
他の女性達と一緒にそそくさとその場を離れとんずらする。
残されたアルフィオ(♂)とトゥリッドゥ(♂)は、恋敵同士で話し合いの結果、トゥリッドゥ(♂)がアルフィオ(♂)の耳に噛みつく。
一瞬、「子供の喧嘩か!」と突っ込みを入れたくなるが、この行為はシチリアでは決闘を申し込む合図だそう。
面白い風習ですね。
サントゥッツァ(♀)は、トゥリッドゥ(♂)の母であるルチアに相談を持ち掛けた。
ローラは結婚しているので、ルチアも自分の息子が不倫しているのではないかと心配になり、憔悴する。
トゥリッドゥ(♂)は家に帰り、母のルチアにこれから起こる事を予期して、自分の心の内を打ち明ける。
「自分はもうここには帰らないかもしれない。もし帰らなければ、サントゥッツァ(♀)を宜しく」と。
トゥリッドゥ(♂)は、もう生きて戻れないかもしれないと覚悟して決闘に向かう。
決闘はアルフィオ(♂)が勝利し、トゥリッドゥ(♂)はアルフィオ(♂)に殺されてしまう。
サントゥッツァ(♀)はトゥリッドゥ(♂)の浮気に逆上しアルフィオ(♂)にローラ(♀)との関係をばらしてしまうが、その結果自分が愛した男が死ぬ事になってしまって、とても嘆き悲しんだ。
個人的感想
「カヴァレリア・ルスティカーナ」の舞台背景(1890年代の経済状況や当時の服装など)の下調べをした上で、オペラを鑑賞しました。
舞台の歌詞はイタリア語かな?
歌詞の言葉は全くわかりませんでしたが、役名だけは聞き取れました。
きっと歌詞が分かればもっとよくストーリーが理解できたのだと思うのですが、歌詞が分からない状態で見ても、下調べをしていたおかげで概ね内容が把握できたと思います。
舞台全体の色が暗かったり、磔にされたキリストがいたり、衣装のチョイスだったりの理由がなんとなく理解していたので、何故こういう風になっているのか理解できたのと同時に、舞台上のストーリーにだけ注目するのではなく、その背景にある経済状況やファッション、流行なんかを想像しながら見れたので、より深みのある見方ができて、充分楽しめました。
逆に下調べを全くしない状態でこの舞台を見ていたら、何が何やら全く分からず、つまらないという評価になっていたでしょう。
皆さんには是非下調べをしてから見る事をおすすめします。
衣装に注目
ローラの衣装 民衆との落差
役者さんたちが着ている衣装に注目した人はいらっしゃるでしょうか。
舞台は終始モノトーンな印象ですが、それに対しローラの衣装はショッキングピンクのワンピースで、ローラの部分だけ特別明るい照明が当たっているのでは?と錯覚させるようでした。
ローラを目立たせるためにあえてローラ以外の人の衣装に色を取り入れなかったのだとは思いますが、ローラとその他との落差がありすぎて、非常に分かりやすくこれなら子供でも理解できそうです。
ローラの着ていた衣装のデザインですが、肩が少し盛り上がった袖、絞ったウエスト、広がるスカート。
これは、1890年代に都会で流行ったファッションです。
当時のシチリアは貧困状態で、なかなかファッションにお金をかける事ができませんでした。
なのに、なぜローラのだけ華やかな都会的ファッションができたのでしょうか?
ローラの夫は馬車屋で各地を飛び回っているので、行った先でお土産に洋服を買ってきたのでは?と想像が広がります。
女性たちの衣装
対して他の女性たちの衣装は広がるスカートにエプロンを着けているものが多いです。
これにもちゃんと意味があって、お金がないけど、おしゃれはしたい女性たちは、自分で流行りに近い服を縫い、おしゃれを楽しもうとしますが、おしゃれ服では農作業などの仕事ができない。
だから、汚れても良いようにエプロンをつけている人が多いのです。
中に、普通のタイトなスーツを着ている女性が一人だけいましたが、逆にそれはとても目立っていたので、なぜこの人だけこの衣装をチョイスした?と思いました。
この人はこの後特に何も出番はなかったので、意味はなかったのかと。
そして女性の髪型ですが、皆アップにしていました。
これも当時の流行りのヘアスタイルです。
対して、サントッツォだけはロングの髪をおろし、動く度にややカールした髪が揺れるのですが、それが感情が揺れ動き、より悲壮感を強調しているようでした。
また、女性達が外に出歩く時に、スカーフを頭から被るのですが、これにもちゃんと意味があります。
女性は外に出る時に髪を見せると男を誘っていると考えるそうです。
男性たちの衣装
男性の衣装を見てみましょう。
男性は皆ベストを着けていました。
ジャケットと帽子を着けずに外出するなんて下品!と思われていた時代。
貧困状態の村でも礼儀を怠らないという、紳士的な印象を受けますね。
ただ、帽子を被っている人が一人もいなかったのが気になる所でした。
シチリアはハンチング帽が象徴とも言ってもいいくらい、イメージが定着しています。
そのハンチング帽をなぜ被っていないのか?
ハンチング帽は20世紀に入ってからシチリアに入ってきたようなので、「カヴァレリア・ルスティカーナ」初演が1890年なので、まだなかったのかな?とも思います。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」における「明」と「暗」
私の想像上では、舞台の当日は復活祭のはず。
もっと村全体は華やかなお祝いムードをイメージしていたのですが、想像より暗い印象で、色がないというか華やかさがイマイチでした。
だけど、それは演出上ローラを引き立てる為、あえて暗くしているのかもと思いました。
みんな大好き「間奏曲」が出てくるのは、サントゥッツァ(♀)はアルフィオ(♂)に妻の不貞を密告した後に始まります。
バックで流れる音楽は終始暗く色味がない印象でしたが、ここで初めて美しく伸びやかなメロディが流れるのです。
舞台が色付けされ、張り詰めていた空気が一変するのです。
緊張と緩和ですね。
この緊張の糸が緩んだ瞬間にホッとさせるこの曲に誰もが惹き付けられるのでしょう。
主役は一体誰なのか?
主役は誰なのだろうとずっと考えていましたが、出番の多さを見るとサントッツォになるでしょう。
よく聞くのは「テーマは名誉」と言いますが、それならもう少し決闘シーン(宗教上できないのかもしれませんが)、男性たちの感情の動き、特にアルフィオの感情がもう少し多くても良いのでは?と感じました。
4人の男女それぞれに視点を合わせて物語を見てみると、違うストーリーが見えてきて面白いのですね。
そもそもハッピーエンド物語に慣れている私としては、誰得なのかという事に目が行ってしまいます。
この「カヴァレリア・ルスティカーナ」では誰ひとりとして、ハッピーになった人はいないですよね。
*サントゥッツァ(♀)は、ストーリーを展開していく上で重要なキーマンです。
彼女はカトリック教の風習に背いた事により、将来は娼婦として生きなければならず、愛する恋人は決闘の末失う事になってしまった。
しかも、自分がアルフィオ(♂)にローラ(♀)とトゥリッドゥ(♂)の関係をばらさなければ、もしかしたら恋人を失う事にはならなかったかもしれないという罪の意識を背負って生きていく事になるでしょう。
最後はサントゥッツァ(♀)の悲しい嘆きで幕引きとなる事を考えると、サントゥッツァ(♀)が主役?とも思えます。
サントゥッツァ(♀)が主役だと純愛物語になるのかな?とも思えます。
*トゥリッドゥ(♂)は、決闘の末命を落とす事になってしまった。
これはある意味自業自得なのだから本人は納得なのかもしれないが、いいのか、それで?と思ってしまいます。
自分が想いを寄せた人への愛を貫く事が名誉であり、誇りであると思っての覚悟の決闘。
それによって命を落とす事になってもかまわないという事こそが大切な事なのでしょうか?
*アルフィオ(♂)は、この人は一番の犠牲者ですよね。
真面目に妻のために働きに行っている間に浮気されて。きっと彼だって好きこのんで決闘なんかしたくなかったんではないでしょうか?
ローラが浮気をしなかったらこんな事する必要がなかったのですから。
「復活祭楽しもう!Yeah!」と帰宅したら、「えぇぇぇ!浮気!?ムカッ!決闘じゃい」となったのですからね。
この感情の急降下は、より怒りを爆発させたでしょうね。
恋人の取り合いで決闘というのは名誉をかけた戦いになるのでしょう。
少し前の時代なら起こり得る事でしょうけど、なんだか動物的というか、短絡的というか、一旦落ち着けと思ってしまいます。
今の時代なら、裁判とか?
*ローラ(♀)は、こんな事を言ってはいけないのかのしれませんが、私の中ではくず認定しています。
ローラを主役にした物語展開だと、かなり自己中なストーリー展開になるでしょうね。
自分のせいで決闘が行われ、一人が命を落とす事になった事について、ローラ(♀)は何を考えていたのでしょう。
二人が決闘した復活祭の日の酒場で、「アルフィオ来るっていっていたのに来ないわねぇ」なんて自分の不倫相手の前で呑気に言い放つなんて、自分以外の人間がどう感じるのか全く気にしていないとは、すごいメンタルの持ち主です。
私の中では、主役はサントゥッツァ(♀)かアルフィオ(♂)が候補です。
純愛物語路線で行くなら、サントゥッツァ(♀)が主役。
名誉を架けた戦い路線で行くなら、アルフィオ(♂)が主役。
結局言いたい事は何なのか?
この「カヴァレリア・ルスティカーナ」の言いたい事とは一体何なのだろうと考えた時に、これはヴェリズモオペラなので、この時代の情景を美化したり、大げさに盛ったりする事なく、写し出した風景画のような物なのではないかと思いました。
動物的な感情のやり取りや、風習を表現していて、あたかもその時代のその村に迷いこんだような錯覚さえします。
ですので、誰かに何かを伝えたいとか、物語として面白いと思ってもらおうとか、そういう作者の計算さは感じられないのが、ナチュラルで良いです。
現実とは、時に残酷でどす黒い時もありますから。
普段はそれを見えないようにうまく隠しているだけで。
テーマは何なのか
テーマは何なのかと考えて思いつくのは先程少し触れましたが、「名誉」か「純粋な愛」かと考えます。
しかし、当時の風習としてこれだけ男女の扱いに理不尽な差があるという事は、この時代に作られた作品という事を考慮すると、女性が主役になるとは考えにくいです。
従って、テーマが「純粋な愛」ではないという事が分かります。
となると、やはりテーマは「名誉」となるでしょう。
しかし、私があまり腑に落ちないのは、今回の名誉を架けた決闘の勝利者であるアルフィオ(♂)の心情にあまり焦点が当てられてない気がするのです。
最後は、サントゥッツァ(♀)の嘆きで締めですし。
アルフィオ(♂)に一言言わせてあけたら良いのにと思います。
みんな大好き カヴァレリア・ルスティカーナ「間奏曲」
私がカヴァレリア・ルスティカーナを調べるきっかけとなったのが、この「間奏曲」です。
この間奏曲には歌詞がついているのですが、それはサントゥッツァ(♀)が聖母マリアに慈悲を乞うのです。
自分が愛した男アルフィオ(♂)に裏切られて憎い気持ちのまま、不倫相手に暴露したばかりに、愛した男が殺されてしまった、悲しい気持ちや許して欲しい気持ち、でも憎みたくはないのに憎い気持ちと相反する気持ちが交差し、どうしようもなくなっている気持ちをどうにか救い出してほしい、許して欲しい思いが、歌詞の中に反映されています。
この「間奏曲」の強弱に注目して聴いてみると、p(ピアノ)⇔f(フォルテ)の緩急がとても激しいです。
それはサントゥッツァ(♀)の愛しているけど憎い、自分のしてしまった事への後悔の思い、2面性のある感情をうまく表現してあって、とても素晴らしい曲だと思います。
演奏する側、聴く側も感情移入しやすく、長きに渡り愛されてきた理由がよく分かります。
カヴァレリア・ルスティカーナが、オペラだという事を知らない人やストーリーを知らない人はいても、この「間奏曲」だけは聴いた事があるという人も多いのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしょうか?
間奏曲に魅了され調べ始めたオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」でしたが、ストーリーを見てみると、なんと人間臭い愛と欲望と憎悪、そして後悔の念が渦巻くストーリーでした。
ストーリーの内容が美しい間奏曲をより引き立たせているのかもしれません。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」はヴェリズモ・オペラと言って、写実主義のオペラです。
実際に起きた出来事を元に人々の暮らしを生々しく描いているのが特徴なので、事実とリンクしている事がとても多いです。
オペラを鑑賞する前の下調べとして、歴史上の背景や宗教、ファッションなどを調べてからオペラを鑑賞するとより理解が深まってオペラ初心者でも十分に楽しめます。
1890年代のシチリアの民衆の衣装は、貧困ながらも都会の流行を取り入れようと、おしゃれ心を忘れない工夫された服装と、カトリックの道徳的観念が入り混じった服装でした。
カヴァレリア・ルスティカーナのオペラを見る際、ストーリーも気になりますが、舞台衣装にも注目してみるのも、もう一つの楽しみ方なのかもしれませんね。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」はこれでおしまいです。
長文お付き合いありがとうございました。
次は、同じヴェリズモ・オペラより「道化師」をお楽しみ下さい。
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