【絵本】　読み聞かせ、寝かしつけ絵本「水たまりを覗いてみると」

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ロリポップ！

読み聞かせ、寝かしつけ、おやすみ用絵本

おやすみ前の時間に読めるような、優しいおはなしです。

雨の日にだけ繋がる水たまりの世界に入り込んでしまったふくろうの奇妙でみずみずしいお話です。

読み聞かせしやすいように、お話は　” 漢字 ” 表記にしてあります。

また、お子様ひとりでも読める用の　” 全ひらがな “　表記も別ページにご用意しておりますので、ご利用下さい。

【シカケテガミ】

水たまりを覗いてみると

雨宿り

しとしと　しとしと　雨が降っています。

しとしと　しとしと　小さな水の粒が、きのこの傘をピンッとはねました。

そこへ　ふくろうがやってきました。

トトトトトトト…

ふくろうの体はとても小さく、くりくりとした大きな目を持っていました。

ふくろうは、羽に当たる草も気にせず、一直線にきのこへやってきました。

トトトトトトト…

「ハァ、ハァ、随分と濡れてしまったホー。」

ふくろうはそうつぶやくと、ブルブルッと羽を振るわせました。

きのこの傘は大きく、雨宿りにピッタリだったのです。

水の音

しとしと　しとしと

きのこから跳ねた水の粒は、ふくろうのくちばしにピンッと止まって、つーと滑り落ちました。

しとしと　しとしと　

ふくろうは、くちばしをつたって落ちていく水の粒を、寄り目になりながら目で追いかけます。

しとしと　ピンッ　つー

くちばしをつたって滑り落ちた水の粒は、ふくろうの足元にピチャンと着地しました。

しとしと　ピンッ　つー　ピチャン

しとしと　ピンッ　つー　ピチャン

周りには誰もいません。

水の粒が葉を跳ねる音だけが聞こえます。

しとしと　ピンッ　つー　ピチャン

しとしと　ピンッ　つー　ピチャン

水たまりを覗いてみると

ふくろうの足元に溜まった水の粒は少しずつ　くっつき、やがて大きな水たまりを作りました。

「ホー、大きな水たまりが出来たホー」

ふくろうは大きな目を更に大きく開いて水たまりを覗き込みました。

「！」

ふくろうの目は、もっと、もっと、もーっと大きくなりました。

一体何があったのでしょう？

ただの薄っぺらい水たまりだと思っていた所は、とても深く大きく広がっていたのです。

「ホー、魚が飛んでるホー！」

ふくろうは夢中になって水たまりの中を覗き込んでいました。

「ちょっと、ちょっと、君、どいてくれないかな」

ふくろうは誰もいないと思っていたのに突然声をかけられって、ビックリして周りをキョロキョロと見まわしました。

「ほらほら、邪魔だよ。どいた、どいた。」

後ろから声がしました。

振り向くと、きのこにピンッと跳ねた水の粒が、ピチャンと水たまりに飛び込みました。

「君、さっきから僕たちの帰り道を通せんぼしているよ」

水の粒が言いました。

「え！？」

ふくろうが水の粒だと思っていたものは、どうやら小さい人？のようでした。

「ホー、君は…誰？」

ふくろうは、うっかり君は何？と聞いてしまいそうになった事をうまくごまかして、誰？と聞きました。

「僕たちは、ここに住んでいる」

水の粒の人は、そうぶっきらぼうに答えると、ピチャンと水たまりに飛び込みました。

「ホー、こんな所に町があるなんて、僕、ちっとも知らなかったホー」

ふくろうは感心して、また水たまりを覗き込みました。

「さあ、分かったら、サッサと　どいた、どいた」

水の粒の人は次々と水たまりの中へ飛び込んでいきます。

水たまりの世界

入りたいけど…

ちょっと面白そうだと思ったふくろうは、足だけ水たまりに入れてみました。

水たまりの中は、水の中に入っているはずなのに、濡れている感じはしませんでした。

ひんやりとした風がサラサラと流れているようでした。

ふくろうは、今度は大胆に顔をどっぷり　浸けてみました。

「ホー、ホー」

（なんて気持ちがいいんでしょう！）

水の粒の人も羽の生えている魚も気になる事がいっぱいでしたが、水たまりの中のサラサラと流れる風に言葉が出ませんでした。

（まるで冷蔵庫を開けた時みたいホー）

「この奥はどんな風になっているんだろホー」

ふくろうは、「中に入ってみたいけど、帰れなくなるかもしれないし、やめておこう」と、頭をあげようとしました。

その時です。

水に濡れた羽が、ツルッと水たまりのフチを滑って、そのまま水たまりの中へ落ちてしまったのです。

水たまりの世界

「ホー、ホー」

ふくろうは落ちてしまった穴に上がろうと必死で羽をばたつかせますが、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと沈んでいきました。

「どうしよう、どうしよう、ホー」

ふくろうは、慌てました。

そこへ、水の粒の人が話しかけました。

「そんなに羽をばたつかせてくれるなよ。こうするんだ」

と、言って手足を体にピッタリとつけ、スーッと下に降りていきました。

ふくろうは、上に上がりたかったのですが、水の粒の人の言う通り、羽を閉じ　じっと動かないようにしました。

すると、エレベーターに乗っているかのように滑らかに降りていきました。

地の底

トンと底にたどり着くと、そこはふくろうの住む世界とあまり変わらない光景が広がっていました。

周りには、わかめのような緑色の森が広がり、きのこの様な丸い屋根をした家が建ち並んでいます。

水の粒の人が、カラフルなサンゴでガーデニングをしています。

違いと言ったら、羽の生えた魚が空を飛んでいる事くらいでしょうか。

「ホー、ホー。ここはとっても気持ちがいい所だホー」

ふくろうはここが気に入りましたが、上の世界に帰らなければなりません。

「さて、どうして上に帰ろうかホー」

ふくろうは上を見上げました。

見上げた上には、ふくろうが落ちてきた水たまりの入口がぽっかりと浮かんでいます。

「あんな高い所にどうやって登ればいいんだホー」

ふくろうはすっかり困り果ててしまいました。

「ホー、あの羽の生えた魚を捕まえて、飛んでかえればいいんじゃないかな」

ふくろうは、魚を捕まえようと羽を伸ばして気が付きました。

「ホ、僕、羽生えているんだった…ホー」

ふくろうったら、自分にも羽が生えていた事をすっかり忘れていたようですね。

上の世界に帰ろう

のぼる、のぼる、のぼる

ふくろうは羽を大きく広げると、一度バサッと羽ばたきました。

ポフッと小さな音をたて、足が地の底を離れました。

バサッ

もう一度大きく羽ばたくと、更に高く浮かび上がりました。

「これなら行けるホー」

そう確信したふくろうは、水たまりの入口を目指して飛んでいきます。

高く、高く飛ぶと周りの景色が良く見えてきました。

遠くの空に窓が見えます。

窓の向こうは、うっすらと明るくなっています。

「もうすぐ雨があがるホー」

水たまりの入口が見えてきました。

水たまりの入口には、七色の階段があり、その先には扉が付いていました。

『地上入口』

ふくろうは、扉の上に付いていた看板を見つけると、扉をギーッと開けました。

上の世界

「ホー、やっと帰ってきたホー」

ドアの向こうは、ふくろうがいた元の世界に繋がっていました。

すっかり雨はあがり、葉の先で水の粒がキラキラと揺れています。

水の粒に映った七色の光は、本物の空に大きく虹の橋をかけているのでした。